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東北大学

 
ヘリカルスピントロニクスの学理構築

研究者名

研究概要

本研究は、半導体や磁性体において、空間変調を受けた電子スピン・磁化構造に着目し、そのダイナミクスがもたらす新たな物性を新規不揮発メモリそして次世代量子情報処理に応用する基盤技術を構築する。さらにスピン・磁化空間構造を統合した「ヘリカルスピントロニクス」と呼ばれる新たな学理構築を目指す。このヘリカルスピントロニクス創成に向け、半導体・磁性体の異なる専門を有する若手研究者2名(好田・金井)と2名の研究協力者(海外機関)で挑む。海外機関は、どちらも研究代表者・研究分担者が過去に滞在し共同研究を展開している、スピントロニクスと量子情報の世界的トップランナーであるIBMチューリッヒ研究所およびシカゴ大学と共に行う。

 

研究成果

【2022年度】

 

【2021年度】

 

【2020年度】

 

 

【2019年度】

1.分子磁性体と金属薄膜間におけるスピン移行の可能性 (H. Gamou et al., Nano Letters 20, 75-80 (2020). 2019年12月13日 プレスリリース)

 

白金は強いスピン軌道相互作用を有すると共に、特に白金表面や界面では構造反転対称性の破れに起因し、新たなスピン軌道相互作用が生まれることが分かっている(J-C. Ryu et al. Phys. Rev. Lett. 116, 256802 (2016))。今回分子磁性体でもあるフタロシアニン/白金界面(図1)において、白金中の電子スピンがフタロシアニンの持つ分子磁性により、強い位相緩和を生み出していることを明らかにし、分子磁性体へのスピン移行の可能性を示した。図2(a)および2(b)に鉄(II)フタロシアニン(FePc/Pt)接合と金属フリーのフタロシアニン(H2PC/Pt)接合における白金(Pt)中の磁気伝導の温度依存性を示す。 H2PC/Ptでは弱反局在現象が観測されスピン軌道相互作用に起因するスピン緩和が生じていることが分かる。一方FePc/Ptでは量子干渉効果自体が抑制されたことから、分子磁性に起因し位相情報が消失したと考えられる。また磁気抵抗測定からFePcへのスピン移行の可能性を示した。

 

プレスリリース

2023.08.04: 未利用磁石材料の電気的制御で新発見 ~磁気八極子と磁気双極子は電流応答に決定的な差異~

2023.01.23: 材料の種類によらず電子スピン波を観測できる新手法を構築 -さまざまな半導体における超並列演算処理へ期待

2022.12.07: 確率動作スピン素子を用いた高性能・省電力「P」コンピューターを実証 ~機械学習や組合せ最適化に適した高い演算性能と電力効率が明らかに~

2022.08.18: ナノ磁石の磁気エネルギー地形の測量に成功 ~高性能疑似量子コンピューター開発に向けた数学的基盤を確立~

2022.04.21: スピン流を利用した高効率磁化反転の新原理を確立 -スピン流を効率的に利用し、外部磁場不要・30%低電流を実現 –

2022.04.08: 固体中の量子情報の保持時間を記述する法則を発見 ~誰でも短時間で量子ビット材料探索が可能に~

2021.11.30: スピントロニクスで脳型コンピュータ向け新素子~ニューロンとシナプスの機能を一体化~

2021.05.14: 電気で操る磁石の研究で新発見~電子スピンで「沈黙の磁石」にGHzのモーター回転~

2021.04.30: 量子ビットに適した固体中のスピン中心は?~ブレイクスルーへ向けた物性・材料の探索指針~

2021.03.18: スピントロニクス疑似量子ビットを従来比100倍超に高速化

2020.08.20: スピントロニクス人工ニューロン素子の超省エネ制御手法を開発

2020.06.16: 半導体における長寿命電子スピン波の発見ー「スピン波」が拓く超省電力・量子情報デバイスへの期待ー