研究者名
研究概要
生体内に大量に存在している活性硫黄種は、ミトコンドリアにおけるエネルギー代謝において必須の役割を担っている。
タンパク質のシステイン側鎖にも多くの活性硫黄が存在しており、タンパク質の機能発現や機能制御に重要な生理機能を発揮している。
活性硫黄研究に立脚して明らかになった新しい生命現象は、生物学・生化学の教科書を書き換えることになる大きな発見であり、生命科学研究における大変革の端緒となる。
本研究ではラマン分光法を利用して、非侵襲的、非破壊的、かつリアルタイムで、ヒトの生体内の硫黄の代謝状態を評価する最先端の計測技術を開発する。
硫黄代謝イメージングの最先端技術を開発し、生体のエネルギー代謝機能解析を展開することで、根本的な生命のしくみである硫黄呼吸の全容を理解し、人類の健康、疾病および寿命のコントロールを可能にする疾病予防・診断技術や創薬などの治療開発に応用展開する。
研究成果
【2020年度、2021年度】
【2019年度】
1.活性硫黄によるタンパク質劣化防止機構の発見(2020年1月8日 東北大学プレスリリース・研究成果)
活性硫黄によるタンパク質劣化防止機構の発見 –タンパク質の劣化を防いで老化防止・健康長寿の可能性–
- 東北大学大学院医学系研究科環境医学分野の赤池孝章(あかいけ たかあき)教授らのグループは、タンパク質中のシステインの活性硫黄によるパースルフィド化が、不可逆的な機能不全からタンパク質を保護していることを明らかにしました。本研究は、活性硫黄がタンパク質の劣化を防止するという全く新しい機構を解明したものであり、生化学や細胞生物学・酸化還元生物学等における画期的な発見です。今回の活性硫黄によるタンパク質劣化防止効果の発見により、ヒトにおける老化防止・健康長寿の確立、および、呼吸器・心疾患、がんなど、酸化ストレスが関わる様々な疾患の診断・予防治療薬の開発が期待されます。
- 本研究成果は、2020 年 1 月 1 日午後 2 時(現地時間、日本時間 1 月 2 日午前4 時)付で、米国科学誌 Science Advances 誌(電子版)に掲載されました。
2.新規活性硫黄窒素代謝物ニトロソスルフィド(HSNO)イメージングの開発
ドイツ学術雑誌 Angewandte Chemie 58:16067-16070 (2019)
- 硫化水素(H2S)および一酸化窒素(NO)の反応中間体であるニトロソスルフィド(HSNO)の選択的検出法として、世界で初めて特異的蛍光プローブTAP-1を開発し、HSNOの蛍光イメージング法の開発に成功した(図4)。
- この研究により、NOによる血管弛緩作用(1998年ノーベル医学生理学賞)が、実は、HSNOやニトロソパースルフィド(HSSNO)である可能性が指摘されはじめた(図5)。
- 現在、これらの研究をNOのノーベル賞受賞者を含めた当該分野の世界のNO研究の開拓者とともに展開している。