専修紹介と履修モデル (2021年度)

(東北大学文学部『学生便覧』2021年度版掲載予定原稿より)

 ドイツの歴史哲学者リッケルトは、『文化科学と自然科学』で「自然科学」と「文化科学」という言葉の対比を通じて、学問を理系・文系とに区別する考え方の基礎と提出しました。その文系の学問世界の中核をなす文学部の研究は、哲学・歴史学・文学の三大分野からなるものと意識されてきました。
 しかし、今日では文系・理系、さらには哲・史・文というような研究の垣根を意識的に取り払い、新たな研究分野の開拓が模索され、いわゆる「学際的」な研究が数多く生まれています。
 また、研究の国際化が促進され、海外の学者たちと共同して研究の理論や技法を開発する傾向も顕著になっています。
 われわれ現代日本学研究室は、学際化と国際化をメインテーマとして、従来の日本研究では見落とされたり見過ごされてきた「日本」の実像を新たな視点から再構成することを目指します。
 現在の教員の主要な研究は、日本近代の歴史を「グローバルヒストリー」の観点から再評価する、日本社会を「ジェンダー」の観点から分析する、日本文化研究の方法を「社会史」の側面から再編成する、「メディア」「表象」の観点から近代史を読み直す、と多様で、学生の皆さんにはこうした教員とともに新たな学問創出に取り組んでもらいたいと希望します。
 なお、現代日本学研究室では、学際的で国際的な日本研究のためには「国際経験」が不可欠であると考えています。そのための海外留学・外国人学生との積極的交流を学生時代の経験の柱とする教育指導を行います。広い世界の中で自己を見つめ直し、変貌する学問の魅力を体得したいと考える学生の輪に加わってください。
 以下、先生方の声に耳を澄ましてお聞きください。
(教授 高橋章則)

 現代の社会は、複雑化するとともにグローバル化を進めています。日本社会の現在の様相について深く知るには、時間的・空間的に視野を広げ、過去の歴史への関心と国際的な比較の視点を持つことが必要です。
 また、進歩する科学技術は社会のありかたに大きな影響を与えていますし、メディアの発達にともなって大量の情報が流通するようになっています。こうした点からみると、従来の人文・社会科学的な研究にとどまらず、科学、技術、情報について考察するための学際的な知識も必要です。
 現代日本学専修では、幅広い教養を土台として、データを的確に処理するための実証研究の方法を学び、現代日本社会を分析します。
(准教授 田中重人)

 現代日本学研究室における歴史研究・教育には、三つの特徴があります。
①従来の日本史に現れる人物や出来事ばかりではなく、国境を超える環境、帝国、震災、移民などの「グローバルヒストリー」的なテーマに力点を置きます。
②日本史研究は長年にわたって英語ばかりではなく様々な言語で研究されてきています。日本国内・国外で行われた諸研究を射程に収め、統一することをゴールに設定します。
③国際的な活動のできる学者を育成することを目的にし、講義では、グローバルな舞台での研究、報告に実効性のあるトレーニングを行います。その上で、日本歴史の詳細を把握しながら世界とのつながりを視野に置いた歴史理解を目指します。
(准教授 クレイグ・クリストファー)

 「日本」の文化・歴史・社会を幅広く多角的に扱う現代日本学研究室では、その性格上、多様な対象が研究の俎上に載せられます。例えば「文化」一つをとっても伝統的な文芸から現代のポップカルチャーまでもがその範疇に入りますし、その何を研究するのかは自由です。それゆえ学生個々人には、幅広い視野で様々な対象に積極的に接触すること、その中で自らの問題関心を先鋭化させること、人文社会科学の多様な方法・視角を知る中で研究手法を研ぎ澄ますこと、そして立ち止まって深く思考することが求められます。それらの作業は時に自らにとって心地よい「物語」(勿論「日本」を含む) を自らの手で破壊することになるかもしれませんが、むしろそこに知的快楽を見いだせる学生を歓迎したいと思います。
 ご相談は随時受け付けていますので、所属教員に直接連絡を取ってみてください。
(准教授 茂木謙之介)

東北大学文学部 現代日本学専修「履修モデル」

1年次 (34~48単位)

●人文社会総論 4単位
●人文社会序論 (現代日本学入門) 2単位
●英語原書講読入門 2単位
●その他 (全学教育、基礎専門科目入門) 26~40単位

2年次 (34~48単位)

●現代日本学概論 4単位
●現代日本学基礎講読 4単位
●日本思想史概論、日本語教育学概論、日本文学概論、日本史概論、文化人類学概論、東洋・日本美術史概論、社会学概論 から 4単位
●その他 20~36単位

3年次 (34~48単位)

●現代日本学各論 6単位
●現代日本学演習 8単位
●現代日本学講読 2単位
●日本思想史各論、日本語教育学各論、日本文学各論、日本史各論、文化人類学各論、東洋・日本美術史各論、社会学各論 から 8単位
●その他 8~24単位

4年次 (34~48単位)

●卒業論文・卒業研究 12単位
●現代日本学各論 4単位
●現代日本学演習 4単位
●その他 12~28単位

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