N₂O₅ガスの作用機序を光るシロイヌナズナで解明 〜プラズマによるオンサイトガス合成技術とのタッグで循環型農業へ〜
FRiDの研究代表者である金子俊郎 教授(工学研究科)、共同研究者である東谷篤志 教授(生命科学研究科)が参画した研究の成果がプレスリリースされました。
【発表のポイント】
- 細胞活動で重要なカルシウムイオン(Ca2+)(注1)のバイオセンサー(GCaMP)(注2)遺伝子を組み込んだ「光る」シロイヌナズナを用いて、N2O5(五酸化二窒素)ガス(注3)にさらされること(暴露)で誘導されるCa2+シグナルを可視化することに成功しました。
- N2O5ガスの暴露部位からカルシウムイオン(Ca2+)シグナルが発生し、時間とともに伝搬していくことが確認されました。
- N2O5ガスに直接暴露されていない葉においても防御関連遺伝子の発現がみられたことから、部分的な処理であっても植物病害を抑制できる可能性が見出されました。
【用語解説】
注1.カルシウムイオン(Ca2+):細胞内で遊離しているカルシウムイオンは、筋肉の収縮や神経活動をはじめとして、ほぼ全ての細胞活動に関与しています。一般的に、細胞内のCa2+濃度は、細胞外よりも1万倍程度低く保たれており、細胞内Ca2+濃度の変化は、次の生体反応を引き起こすスイッチとして機能したり、情報伝達の役割を担うことが知られています。
注2.バイオセンサー(GCaMP):緑色蛍光タンパク質(GFP)に、Ca2+を結合するドメイン(領域)を融合したタンパク質。細胞内Ca2+と結合すると明るく緑色に光ります。
注3.N2O5(五酸化二窒素)ガス:酸素・窒素原子のみから構成される分子であり、無水硝酸とも呼ばれます。水と反応して硝酸(HNO3)を生じる過程で、非常に反応性が高いニトロニウムイオン(NO2+)を一時的に生じます。熱や水分に弱く保管が困難であることから、入手が難しくこれまでは広く使用されてきませんでした。
詳細は以下リンクをご参照ください。
FRiD研究課題名:プラズマアグリ ‐機能性窒素を活用したサステナブルファーム‐
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